前回のコラムでは「経営」という視点から融資の戦略について
大まかな概要を考察してみました。
不動産賃貸業では、今後の事業規模の拡大、さらには毎月のキャッシュフローの拡大を目指した場合に
融資の戦略が最大のカギとなってきます。
そこで今回はさらに踏み込み、金融機関はどこを見ているのか?
「金融機関が見ている指標」について、詳しく確認していきたいと思います。
■金融機関はどこを見ているのか?
DSCR・LTVを分かりやすく解説します!!
「物件の収益は悪くないのに融資が通らない」
「自己資金はあるのに希望額まで借りられない」
このような経験をされた方も多いのではないでしょうか。
実は金融機関は、物件価格だけでなく
いくつかの『融資指標』を重視して活用しています。
今回はその中でも特に重要な指標である、
・DSCR
・LTV
について確認していきたいと思います。
■金融機関は“返済能力”を見ている!!
金融機関が融資をする際に最も重要視しているのはどんなことでしょうか?
「この案件において融資の借り手は確実に返済ができるだろうか?」
というところから確認の作業が始まります。
具体的には、
家賃収入、空室リスク、修繕余力、借入希望額、自己資金などを
総合的に見ていきます。
そこで、各種の判断材料となるのが融資の指標です。
特に今回は2つの指標について確認していきます。
■DSCRとは何か?
Debt Service Coverage ratio の略で、日本語で「借入金償還余裕率」と呼ばれます。
「年間返済額に対して、どれくらいキャッシュフロー余力があるか」
を示す指標です。
金融機関は「この物件は家賃収入から無理なくローンを返済できるか」を評価するために、
この数値を厳しくチェックします。
どれだけ魅力的に見える物件でも、DSCRが低いと融資の審査に落ちたり、
融資額を減額されたりするリスクが高まります。
【DSCRの計算方法】
DSCR=純営業利益(NOI)/年間融資返済額
純営業利益(NOI):
満室想定家賃から、空室損失や運営管理費(固定資産税、管理委託料、修繕費など)を
差し引いた、実際のキャッシュフローに近い利益。
具体的な事例を見ていきましょう。
例えば、戸建賃貸2棟の場合
・年間家賃収入:288万円
・概算経費等:50万円
・年間融資返済額:156万円
純営業利益は238万円なので、
DSCR = 238/156 = 1.52 となります。
この場合のDSCR=1.52は、返済額に対して約52%のゆとりがあることを意味します。
DSCRの一般的目安ですが、
・1.0以下 → 危険(赤字リスク)
収入より返済額が多く、手元から持ち出しが発生する状態
原則、融資不可の状態
・1.1~1.2 → ギリギリ(安全性が低い)
・1.3以上 → 標準(融資承認の目安)
多くの地方銀行や信用金庫が融資のボーダーラインとして設定する基準
・1.5以上 → 優良(非常に安全)
となります。 (※目安は金融機関や物件の構造により異なります)
■DSCRを改善する3つの方法
DSCRを高くすることは、融資審査を有利に進めるだけでなく、
自身の投資リスクを下げることにも直結します。
改善策1)自己資金を増やす
借入総額を減らすことで、分母である「年間融資返済額」が小さくなり、
DSCRが大幅に向上します。
改善策2)融資期間を長く設定する
返済期間を延ばすことで毎月の返済額を抑え、DSCRを上げることが出来ます。
ただし、物件により法定耐用年数による制限があり、注意が必要です。
改善策3)物件の運営費(経費)を最適化する
無駄な管理コストや広告費を削減し、分子である「純営業利益(NOI)」を高めます。
一般的に新築物件であれば入居者からのクレームはほぼないので
管理を自主管理にて行うことは容易に可能です。
また、物件別ではアパート1Kなどに比べてファミリー向けの戸建賃貸住宅では、
入居率、入居期間とも良好ですので比較的経費を抑えることが出来ます。
■LTVとは何か?
Loan To Value の略です。日本語で「借入金比率」と呼ばれます。
「物件価格に対して、どれくらい借入しているか」
言い換えると、どれだけ借金に頼っているか を見る指標です。
【LTVの計算方法】
LTV=借入額/物件価格
で表せます。
戸建賃貸2棟の事例で見てみましょう。
・物件価格:3,250万円
・借入額:2,500万円 の場合
LTV= 2500/3250 = 0.769 借入の割合が約77%です。
いわゆるフルローンはLTV100%、
諸経費まで借りるオーバーローンはLTV105%などとなります。
LTVの目安一般的目安ですが、
・80%以下 : 健全
金融機関の審査に通りやすく、元本割れリスクが低い
・90~100%: レバレッジは高いが、空室時のリスクは大きい
・100超 : 債務超過リスクあり
物件を売却しても借金を返しきれない状態
LTVが高いとどうなるのか?
金融機関の目線では、
自己資金が少ない = 融資額が増え月々の返済額が多くなる
= 家賃下落リスクや空室リスクなどに弱いとみなされます。
■DSCRとLTVの「違い」と「関連性」
金融機関は融資の審査を行う際にDSCRとLTVの両方をセットで見ています。
なぜなら、この2つは「リスクを見る角度」が全く異なるからです。
・DSCR=「収支(インカム)」の安全性を見る指標、
毎月の家賃で返済できるか。
・LTV=「資産(キャピタル)」の安全性を見る指標、
万が一のとき、物件を売って全額回収できるか。
また、DSCRとLTVは「自己資金(頭金)の額」を介してシーソーのような
関係にあります。
1)LTVを下げると、DSCRが上がる(安全性が高まる)
自己資金を入れて借入額を減らすと、毎月の返済額が減る為、
家賃収入に対する返済の余裕度は上がります。
2)LTVを上げると、DSCRが下がる(リスクが高まる)
フルローンなどで借入金を増やすと、毎月の返済額が増える為、
返済の余裕度は下がります。
最も注意すべき状況「最悪のパターン」は、
LTVが高く(100%近く)、かつDSCRが低い(1.1~1.2程度)状態です。
この状態で物件の運営を行いますと、わずかな空室や家賃の下落で
毎月の収支が赤字になります。(DSCRの崩壊)
そして、耐えかねて物件を売却しようとしても、借入額が多すぎて
売却代金でローンを完済できないという状況に陥ります。(LTVの罠)
■まとめ 融資審査を突破する「2つの楯」
不動産賃貸業の事業計画書の利回りが高く見えても、
DSCRが低ければそれは「ハイリスクな投資」となります。
新築のアパートや戸建賃貸住宅を企画したり、中古物件の購入を検討する際は、
表面的な利回りだけで判断せず、必ずDSCRとLTVを計算してみることをお勧めいたします。
・DSCR:1.3以上(毎月のキャッシュフローを守る楯)
・LTV:80%以下(万が一の売却損を守る楯)
この2つの指標をバランスよくコントロールすることこそが、
金融機関から「貸したい」と思われる、優良顧客への第一歩となります。
ぜひ、ご参考にして下さい。

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